空き家売却 その2

体験談

一度土地売却をキャンセルしてから数年の間は、不動産会社や私が何を言っても母は「売らない」の一点張りでした。
私も諦めて、将来母がいなくなった後の遺産相続時に手続きすることになるのだろうと思っていました。

そんなある日のこと、母が自宅で転んで胸椎を圧迫骨折してしまいます。
救急車で病院に搬送され、数日後には背中にプレートとボルトを入れる手術をしました。
手術は無事成功し、約5ヶ月の入院後、自宅に戻ります。

自宅に戻ってからは、安定した生活が続き、背中のプレートも1年後には抜去して完治となりました。しかし、骨折前に出来ていた家事は全て出来なくなり、デイサービスも拒否して、ベッドでテレビを見るだけの毎日を過ごしていく内に、物事に対する執着が段々と薄れていきました。

ちょうどその頃、空き家売却の話をしていた不動産会社から「廃業することになりました。土地建物の資料を希望する不動産会社に引き継ぐことが出来ますがどうしますか?」と連絡がありました。
母に数年ぶりに土地建物の話をすると、なんと「売却してもいい」と言うではありませんか!
一度キャンセルしているので、そのセリフが本当かどうか疑いましたが、数年前とは違い、物事への執着が薄れている今の状態なら大丈夫かもしれない。
前みたいに契約をキャンセルするようなことはもうしないと約束して、再び売却に向けて動くことにしました。

お勧めしてもらった不動産会社に資料を引き継いでもらい、数年ぶりに不動産売却の話が進みます。
新しい不動産会社の人と打ち合わせをしたところ、母が売却を拒否している間に土地の値段が上がり、昔キャンセルした契約の倍以上の価格で売却することが出来ました。
今回も土地のみの売却で、更地にするお金はこちら持ちですが、それでも結構な黒字になります。
母が土地売却をキャンセルした当時は、本当に腹が立ちましたが、土地価格が値上がりしてくれたことで、あの時キャンセルして良かったのだと思うようになりました。

無事に土地売却が完了した後は、今度は確定申告をしなくてはいけませんでした。もちろん母はできないので、私が代理で書類作成と申告をします。

FPのタックスプランニング分野の「譲渡所得」の部分ですね。売却価格から必要経費を引いて、譲渡所得が確定した後に、障害者控除(母は要介護認定されている)とふるさと納税で少しでも節税になるようにしました。マイホーム売却でしたら3000万円まで控除されるのですが、空き家状態で何十年も名義人本人は住んでいなかったので、3000万円控除は使えませんでした。そうなると、売却した年の所得が大幅に増えてしまい、その後1年間は、所得税、住民税、後期高齢者医療保険の保険料、医療保険の割合が1割→3割、介護保険の料金も上がり、介護負担割合も1割→3割になりました。

「この1年の間は大病しないで」と願い続けて無事に1年経ち、元の1割負担➕非課税世帯に戻った時はようやく安心できました。